さだの国から '89〜'99
-- さだまさしメーリングリスト10年の軌跡 --
法林 浩之
ソニー/さだまさしメーリングリスト
hourin@massan.gr.jp
Powered by ... mgp2html.pl
(page 1)
何の話をするねん
さだまさしメーリングリストの10年間について話す
- 技術的側面
- 統計学的側面
- コミュニケーション的側面
- メーリングリスト(インターネット)を使ったコミュニティ作り
(page 2)
さだまさしメーリングリストの紹介
- さだまさしさん@歌手の私設ファンクラブ的ML
- 「まさしんぐリスト」とも呼んでいる
- 公式ファンクラブ「まさしんぐWORLD」からとった
- 1989年11月設立 → 10年経過
- 現在、約650人が参加
- 歴代管理サイトと管理人
期間 | サイト | 管理人 |
1989/11〜1992/03 | osaka-u.ac.jp | 法林 |
1992/03〜1994/01 | uec.ac.jp | 鈴木さん |
1994/01〜1997/07 | sony.co.jp | 岡崎さん |
1997/07〜現在 | rekihaku.ac.jp | 鈴木さん |
(page 3)
設立の経緯
- 1989年11月4日
- fj.rec.musicに「さだまさしファンいませんか?」記事投稿される
- 以後2週間
- 大量のフォロー記事が投稿される(約80本)
- fjのSubjectランキングでも上位に入る
- メーリングリストを作った方がいいのでは? → 法林が作成
- 1989年11月16日
- メーリングリスト参加者をfj.rec.musicで募集
- 1989年11月20日
- メーリングリストに最初のメールが流れる
- 参加者10人
(page 4)
私が管理人になったわけ
- 当時の私の立場
- 大阪大学基礎工学部情報工学科の(2回目の)4年生
- 昨年度、卒業研究を終えていた
つまり、暇だった(^_^;)
- メーリングリストの設定方法を知っている人が近くにいた
- 齊藤さん、木津さんなど
- 方法を教えてもらい自分で設定
(page 5)
設立当時の配送環境
- 時代背景
- サーバ機
- ouics3.osaka-u.ac.jp
- Sun3/75M-4
- メール配送
- sendmail(4.0/6.4J.6)
- 一部サイトのみMXで配送、普通はUUCP接続
- MLドライバ
- /etc/aliases :-)
- massan: :include:/usr/local/massan/members (メンバーファイル)
- massan-request: hourin (管理者用アドレス)
(page 6)
配送を少し工夫する
- メンバーファイル
- 参加者のドメインを見て、MXでどのサイトに配送されるか調べる
- 同じサイトに送られる参加者が連続するように並べる
- 記事番号を付ける
- 1991年4月から導入
- メールの欠落を検出したかった
- へッダ例
- X-Ml-Name: massan
- X-Ml-Count: 20322
- Subjectの先頭に付加する形にはしていない
(page 7)
管理サイトを電通大に移転
- 管理人(自分)の就職に伴い交代
- 後任を募集し、引き継ぎ
- 2代目管理人: 鈴木さん
- 1992年3月から1994年1月まで
- 参加者数: 約60人 → 120人
(page 8)
電通大時代の配送環境
- 時代背景
- 商用ISPの黎明期
- パソコン通信(Niftyなど)もインターネットに参加
- サーバ機
- メール配送
- sendmail(4.1/6.4J.6)
- MXによる配送が定着
- MLドライバ
(page 9)
MLドライバへの機能追加
- 1993年ぐらいから、独自の実装が追加され始める
- 記事取り寄せ
- 記事番号を書いたメールを送ると、自動応答でその番号の記事が返ってくる
- 欠落した記事を読める
- 蓄積配送
- 1日1〜2回、記事を1本のメールに連結して配送
- 本来は、メールが頻繁に来て煩わしい人のために作った
- Niftyからの参加者にも役立った
- 配送時刻は複数のパターンを用意し、参加者が選択
- SubjectへのML名と記事番号の付加
(page 10)
ソニーへの移転
- 管理人(鈴木さん)の就職に伴い交代
- 後任を募集し、引き継ぎ
- 自分は会社のネットワーク管理で多忙だったので応募しなかった
- 3代目管理人: 岡崎さん
- 1994年1月から1997年7月まで
- 参加者数: 120人 → 400人
(page 11)
ソニー時代の配送環境
- 時代背景
- サーバ機
- Sony NEWS 5000
- 社内ネットワークにあった
- メール配送
- sendmail(4.2/3.3W)
- 基本的にMXで配送、ただしFirewallまでは同じ経路
- MLドライバ
- 独自プログラムに機能を付加しつつ使用
- 発信者制限(ML参加者のみ投稿可能)
- 同時送信数の抑制
(page 12)
MLの規模拡大に伴う問題
- 参加者も増加、投稿数も増加
- ユーザにとっては…
- ML管理者にとっては…
- 加入/脱退などの作業量の増加
- ここは自動化していない(現在も手動)
- 会社のネットワークにとっては…
- メール流通量におけるMLの比率増大
- 業務利用と個人利用の区別がうるさくなる
- さだまさしMLが社内メール流通量の1位に(^_^;)
(page 13)
同時送信数の抑制
- MLサーバから一度に大量に送信すると、中継メールサーバで受け切れない
- 同時送信数を抑える機能を追加
- 1994年から導入
- 配送は安定したが、その代わり遅くなった
- 現在もこの機能はあるが、見直す時期か
- メールサーバの性能が上がった
- ユーザの意識変化
- 以前: メールが届くには時間がかかる
- 現在: メールは出せばすぐ届く
(page 14)
歴史民俗博物館への移転
- メーリングリストが博物館入りしたわけではない:-)
- ソニーの社内事情による移転
- 後任を募集し、引き継ぎ
- 4代目管理人: 鈴木さん(2代目と同一人物)
- 1997年7月から現在に至る
- 参加者数: 400人 → 650人
(page 15)
現在の配送環境
- 時代背景
- さだ企画のWWWを見て参加する人が多いらしい
- インターネット初心者の参加が顕著に増えた
- サーバ機
- SPARCstation 5 (SunOS 4.1.4-JLE1.1.4)
- メール配送
- MLドライバ
(page 16)
「よくない」とされるメールへの対応
- 半角カナ、機種依存文字、HTMLメールなど
- 配送プログラムで強制変換して送信
- 発信者にも警告メールが送られる
- MIMEのmultipartメールは全部警告してしまう
- 最近はmultipartメールしか出せない端末があるらしい
(page 17)
MIME化された日本語Subject
- 現在の方針: 使ってもよいが、ローマ字を併記する
- 最近、日本語のみのSubjectで投稿する人が多い
- 利用年数の浅い人に多い?
- ローマ字や英語を併記するのは面倒
- MIMEに関する初心者とベテランの意識の差
- 初心者
- MIMEに関する知識はない
- ほぼ例外なく(無意識のうちに)MIME環境が整っていて使える
- ベテラン
- MIMEに関する知識はある(生JISとの違いもわかる)
- しかしMIME環境が整っていない場合がある
(page 18)
10周年記念事業(1): ドメインの取得
ドメイン名: massan.gr.jp
団体名: さだまさしメーリングリスト
- 書類さえ出せば通る
- 申込フォーマットをJPNICから入手し、記入
- 代表者と副代表者を決め、印鑑証明を用意
- gr.jpの場合は必要
- 自分が言い出しっぺなので代表者に
(page 19)
10周年記念事業(2): 独自サーバ確保
- ずっとどこかの組織に間借りというわけにはいかない
- ISPのご厚意でサーバを提供してもらえるような団体でもない
- ISPのメーリングリストサービスでは不十分
- メーリングリスト以外のツールも自由に使いたい
→ サーバ1台丸ごと借りるサービスを利用
- さくらインターネットを利用
- 自分で個人用に借りて、それをMLに提供
(page 20)
統計情報の紹介
- 保存されている情報
- 10年間のメール全部
- 参加者リスト(参加/脱退の日付つき)
- これらを集計して算出
(page 21)
参加者数
参加者数: 649人
通算参加者数: 1050人(脱退した人を含めた累計)
定着率65%: 高いか低いかよくわからない
(page 22)
ドメイン属性別参加者数
参加者リストから集計(1998年は資料なし)
1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
-------------------------------------------------------------
ac.jp 7 16 23 28 49 58 93 97 91 72
co.jp 3 13 35 53 58 66 81 95 101 100
ntt.jp 3 4 5 6 6 8 6 --- ---
go.jp 1 1 4 4 4 7 8 11 12
or.jp 2 19 56 126 188 120
ad.jp 1 2 1 1 1
地域.jp 2 3 6 4
ne.jp 25 314
gr.jp 1
com 2 3 5 13 16
net 1 5 6
org 1 1 1
edu 1
外国 1 1 3 2
-------------------------------------------------------------
参加 10 33 63 90 120 157 252 343 446 ??? 649
(外国の内訳: 1993,1994年はuk, 1997年はau,id,ie, 1999年はde,nu)
(page 23)
投稿数
- 総数: 21554通
- ML設立以前のfj.rec.musicの記事も含む
- 最多投稿者は1346通
- 投稿数の多いSubject
- 4位までは「Subjectなし」と「はじめまして」で独占:-)
- 1つのスレッドとしては最大で40通ぐらい
- 投稿が多くなる話題の傾向は特にない
(page 24)
投稿者数
- 総数: 約670人 (通算登録者の2/3に相当)
- 1991年までは、投稿者数が参加者数より多い
(page 25)
メール環境について
- 日本語Subjectに関するアンケートを実施
- 回答者約80人
- MIME化日本語Subjectを全く読めない人: ほぼ0人
- できれば避けて欲しいと思っている人: 10%
- 同時に使用メーラも調査
- Outlookが25%で1位
- 他にはNetscape, AL-mail, Becky!, Eudora, Winbiff, MH-e, Mewなど
- 20種類以上のメーラが登場
(page 26)
10年やってきて思ったこと
- インターネットを使ったコミュニティ作りの一例
- 話題が途切れずに10年続いたことがうれしい
- さだまさしファンの特性に意外に合っていたらしい
- ファン同士はよくコミュニティを作る
- 一般人にはファンであることを告白しない人が多い
- 好き嫌いがはっきり分かれるから?
- オフラインの範囲にファンがいない場合が多い
- 人知れず交流できるMLの良さが生かされた
(page 27)
話題が途切れずに10年続いた理由
- MLの存在を常に公開していた
- メンバーに投稿する機会を与える努力
- オフラインミーティングのリレーレポート
- 次の投稿者を指名しながらレポートを進める
- 結果的に参加者は全員投稿することになる
- 誕生日を登録しておくとお祝いのメールが流れる
- 良識ある参加者に恵まれた
- 内容のない投稿を多発しない
- 流量が多いと苦情が出て控え目になる → 適切な流量で推移
- さださんの活動の継続
(page 28)
メーリングリストの役割の変化
- 10年前
- コミュニティ作りの道具はメーリングリストしかなかった
- MLドライバにいろいろな機能が実装された
- 現在
- メーリングリストは、コミュニティ作りの道具の1つ
- 他の道具も組み合わせてよりよい交流を図りたい
- そのために独自サーバを用意した
(page 29)
独自サーバの利用状況
- www.massan.gr.jp
- MLの紹介と参加方法は外部に公開
- メンバー向けページ
- 一部のサブML
- アドレスはxxxx@massan.gr.jp
- メール配送にsmtpfeedを導入
- さだまさしMLも近日移行予定
- メールの集計
- オフラインミーティングの日程調整
(page 30)
これから独自サーバで実施したいこと
- さだまさしMLの移行と共同管理
- MLのメールの全文検索
- 技術的には難しくない
- 個人情報の載ったメールは検索対象から外したい
- コンサート報告用サブMLの設置
- さだまさしコンサートは年中開催
- ネタがバレるのでコンサートの報告をMLに書けない
- コンサートの中継
- 実況用MLとIRCではすでに実現
- 映像/音声での中継は、権利の面で無理
(page 31)
独自のMLドライバの改良
- 他のMLドライバとは視点が違う
- 他のMLドライバ
- 大量のメールを多数の参加者に速く送る
- 管理の手間の軽減
- さだまさしMLのドライバ
- 参加者に選択の余地を与える
- 初心者ユーザへの助言機能
- ユーザにやさしいMLドライバを考えていきたい
- 配送環境は速くなった
- ユーザの購読能力は(平均的には)向上していない
(page 32)
今後の展開
- 主婦と高齢者の動きに注目
- 主たるファン層がようやくMLに参加し始めた
- メーリングリストへの関わり方は若い人と同じか?
- ファン同士の交流の場としての発展
- 単なるメールの配送システムではなく、それを使う人々の交流システムとして考えたい
- なんでもメールでやる必要はない
- 参加者の能力や関わり方に応じて楽しめる仕組みを考えたい
(page 33)
まとめ
さだまさしメーリングリストの10年間について話した
- メーリングリストの歴史(主に配送環境)
- メールの統計情報
- 10年間やってきて思うこと
本日の資料
http://www.massan.gr.jp/~hourin/massan20000209/
さだまさしメーリングリストの紹介
http://www.massan.gr.jp/
(page 34)